コラム

EMCの国際規格

2015/12/17

みなさん、こんにちは。

EMC測定の基礎ということで第1回はEMCとは何?を簡単に説明させていただきましたが、少しはお解りいただけましたでしょうか。

これからますます多様化する情報化社会において、ノイズによる製品の誤動作、暴走事故は非常に大きな社会問題ですね。消費者が、安心して製品を使えるようにするためにEMCはとても大切な分野になります。
さて、今回もお菓子でも食べながら軽く読み流して下さい。

EMCの国際規格

第1回の最後にも書きましたが、ノイズを全く発生しない、またノイズの影響を全く受けない製品を作ることはまず不可能でしょう。

仮に出来たとしても非常に高価で扱いにくい製品になってしまうこと間違いなしです。そんなもの誰も買いたいなんて思わないですよね。そこで「ここまでならOK!」という線引き(規定)をして、これに向かって製品を開発・設計していくことになります。
この規定について、ノイズの発生、製品がどの程度ノイズを発生しているかをエミッション(またはEMI)と呼び、ノイズの影響の受け難さ(耐性)をイミュニティ(またはEMS)と呼ぶのが一般的です。そして、これら両者を合わせてEMCと呼びます。EMCの本には必ずこのように説明されていますね。
ここで、疑問が出てきませんか?

いったい誰が規定するの?

その規定した値は適切なの?

実情に当てはまっているの?と。

実はEMCを牛耳る独裁者がいて、その者が…

ということは全くなく、国際的な標準を作る組織(団体)、皆さんにはISO 9001や14001などでお馴染みなISO(国際標準化機構)もそのひとつですが、電気・電子やこれに関係する技術を扱うIEC(国際電気標準会議)という団体があります。ここでEMCについても各国の代表が議論を重ね、規定値を決めているんです。IECはISOほど馴染みがないと思いますが、ジュネーブに本部を置き日本をはじめ100ヶ国以上が参加している団体で、IECの中には分野ごとに規格を作る100以上の専門委員会(TC:Technical Committee)があるんですよ。
洋楽を聴きたいと海外の音楽レーベルCDを買ったり、海外の音楽配信サイトからダウンロードしたとき、そのまま自分のCDプレーヤーやPCで聴けますよね?洋画のDVDを観るときも同じように。これもIECなどの団体で細かく規格を決めて標準化されているおかげなんですね。

さてさて、話をEMCに戻しましょう。EMCの規格はIECではTC77という77番目の専門委員会で決められています。
さらにTC77の中でさらに細分化された、
SC77A低周波EMC
SC77B高周波EMC
SC77C高電磁界過渡現象
といった3つの小委員会(SC:Sub Committee)があります。

何だか難しくなってきましたねぇ。聞いたことないような用語ばかりだし。

でもここでは、「はぁ~そんなのがあるんだ~」程度で読んでいただければ。

さて、IECの規格には60000~79999までの範囲で(もちろんまだ全てが使われているわけではありません)番号が付与されますが、TC77で作られた規格は61000が付きます。

代表的な規格としては

・IEC 61000-4-2 静電気イミュニティ試験 →第1回で書いた①に関連する試験ですね。

・IEC 61000-4-3 放射無線周波数電磁界イミュニティ試験 →これは②⑤⑥に関連する試 験です。

・IEC 61000-4-4 電気的ファストトランジェントバーストイミュニティ試験 →これも⑥ に関連してきます。

・IEC 61000-4-5 サージイミュニティ試験

・IEC 61000-4-6 無線周波電磁界に誘導される伝導妨害に対するイミュニティ試験 などがあります。

これらのIEC規格は日本工業規格(JIS)でも取り入れており、例えばIEC 61000-4-2は、JIS C 61000-4-2、IEC 61000-4-6はJIS C 61000-4-6といった規格番号となっています。

IEC TC77

さらにIECの中にはEMCに関係する特別委員会であるCISPR(国際無線障害特別委員会)というのが置かれています。CISPRはフランス語の頭文字をとった名称で一般的に「シスプル」と読むことが多いですが、中には「シスパー」と言われる方も一部いらっしゃるようです。このCISPRの中にもIEC同様、つぎのようなSC(小委員会)などがあります。

・SC-A 無線妨害測定と統計的手法
・SC-B 工業・科学・医療(ISM)向け高周波装置、高電圧機器、電力線、電気鉄道における妨害
・SC-CD自動車、内燃機関における妨害

cispr

CISPRからも現在30以上の規格が作られており、一部ですが、挙げてみると
・CISPR 11 工業・科学・医療(ISM)用高周波機器の電磁妨害特性の許容値および測定方法
・CISPR 12 車両、モーターボート、及び火花点火エンジン駆動装置からの妨害波の許容 値および測定方法
・CISPR 14 電磁環境適合性 電動工具、電気・電子機器および同様の装置
1)エミッション
2)イミュニティ
・CISPR 22 情報技術設備の無線妨害特性の許容値および測定方法
・CISPR 25 車載受信機保護のための妨害特性の許容値および測定方法
などがあります。

このように、私たちが生活する中で起こりうるノイズに起因する多くの現象に相当する試験がIECやCISPR規格の中に網羅されているんですね。

EMCに関する規格は、IECやCISPRだけではなく、ISOにも規定されていますし、アメリカではFCC(アメリカ連邦通信委員会)、ヨーロッパ共同体ではEN(ヨーロッパ規格)我が国ではJISのほかにVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)などで制定された独自のEMCに関する規格があります。
VCCIは、1985年にCISPRが情報処理装置や電子事務機器から発生する妨害波の許容値と測定方法について勧告したことを受けて、日本電子工業振興協会をはじめとする4つの業界団体によって設立されました。
(現在は、情報処理装置等電波障害自主規制協議会から、一般財団法人VCCI協会となっています)
皆さんお持ちのパソコンで、モデル名や製造番号が記された付近に、下記のマークが見当たりませんか?

vcci

このマークはVCCIで規定された測定方法で、妨害波の許容値が限度以下ですよ!という証です。

以上、代表的なEMC規格について書かせていただきましたが、実際はまだまだたくさんのEMC規格が世の中に存在します。ただ、これらの規格も基本としているのはIECであったり、CISPRであったりすることが多いようです。
次回から数回に分けて、このIEC/CISPR規格で決められている代表的な測定方法や限度値について書きたいと思います。

参考文献

電磁環境工学EMC 科学技術出版株式会社
EMCのおはなし 平戸昌利氏著 日本規格協会
一般財団法人VCCI協会 ホームページ

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